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なめたらアカン女の労働!!
-京大雇い止め裁判の判決に寄せて-

  3月31日13時10分。京都地方裁判所305法廷は、立ち見の傍聴人に溢れていた。
京都大学時間雇用職員井上さん、小川さんの判決が下りる。
裁判官和久田氏入廷。固唾を呑んで見守る傍聴人。
「主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。2 訴訟費用は, 原告らの負担とする」
 ハぁー??? 全身の力が抜けていく。
ヨレヨレになって、集会会場までたどり着く。弁護団から判決の中身を聞くうちに、津波のように怒りが湧き上がってくる。非正規労働者・女性・学歴・職業差別に満ち満ちた不当判決だ。

1. 非正規労働者差別
弁護団によれば、京都地裁は、原告らが担当してきた業務は「家計補助労働、期限の定めのない契約を結ぶべき社会通念上相当な事情はない」、そのような労働は「労働契約が更新されなかった場合に労働者の生活そのものが崩壊するというようなことを想定しなければならない類型の労働とはいい難い」としている。
  冗談じゃない。
 2010年労働力調査によると、パートやアルバイト、派遣社員など非正社員が全雇用者に占める割合は、2010年平均で34.3%となり、比 較可能な02年以降で最大となった。正社員は25万人減って3355 万人となり過去最少に。非正社員は34万人増の1755万人で08年に次ぐ多さだった。非正社員の割合は男性18.9%、女性53.8%。非正社員のうち、増加が目立ったのはパート・アルバイトで、前年から39万人増の1192万人。
 この1192万人のパート・アルバイト労働者は、皆「家計補助」だと言うのだろうか?パート労働の女性の20%、男性の60%近くがパート収入を主な収入源としているというのに・・・パート労働で生計を立てるしかない女性や若年層の存在が見えないのだろうか?
 少なくとも、原告の井上さん、小川さんは明らかに京大図書館の時間雇用で生計を立てていた。彼らにとってこの仕事は家計補助ではないことを、裁判官が知らぬはずは無い。
 また、家計補助であれば、いつクビにされてもいいというのは、パートやアルバイトの労働者としての権利を否定し、差別していることになる。

2. 学歴・職業差別
 和久田裁判官も京大出身。判決では「京大卒の原告らが家計補助的労働にしか従事できない客観的かつ合理的な事情はうかがえず、どんな世界観・人生観でこうした就労形態を選択したか不明」とも述べた。
 京大卒の男性たるもの、パートやバイトなんぞするな。裁判官のような「立派な」職業に就けと言うのか。逆に三流大学や高卒の人間は、パートやバイトなどの不安定雇用でも仕方が無いというのは、学歴による職業の貴賎上下を認めていることにならないか。
  また、雇用不安の中、いまや東大を出ても就職が見つからない人もいるということもご存じないらしい。 
 たとえ好き好んでパート・バイトを選択したとしても、それは憲法で保障された職業選択の自由である。私もかつて自ら公務員を辞めた。イジメ、パワハラ、過労で入院したときに、安定と引き換えに人生を差し出すことは出来ないと気付いたからだ。人は生きるために働くのだ。働くために生きるのではない。

3. 女性差別
2010年労働力調査によると、女性の非正規労働者のうち女性のパート・アルバイトは933万人、男性は259万人とパート・アルバイトの78%は女性が占める。ちなみに私のような契約・嘱託(有期雇用)は女性151万人、180万人であり、男女とも増加している。
 男は稼ぎ手、女は主婦という近代家族モデルによって、女性の労働は家計補助とされ、買い叩かれてきた。また、介護、保育、家事労働などの労働は、無償の主婦労働の延長、女なら誰でも出来る労働とみなされ、低賃金に置かれている。経済のグローバル化とともに、労働力の女性化が進行したのは、女性労働が安いからだ。しかも女性は従順で真面目、男のように争議を起したり、逃げ出したりしない。
 しかしこの近代家族モデルはとうの昔に崩壊している。私が長年調査を行ってきたインドネシアを初めとする途上国の貧困層では、女性が稼ぎ手している。海外出稼ぎハウスメイドも、工場労働者も、物売りなどのインフォーマルセクターも、女性である。その背景には男性の不完全・不安定就労問題がある。安価な女性が求められるがゆえに、男の仕事が無くなる。男の稼ぎが当てにならないから、女はさらに稼ぎ手化する。海外出稼ぎなどの危険を冒しても、極めて収益性が低い商売でも、家計を支える女性には選択の余地など無い。
 日本においても雇用が不安定になり、若年層男性まで親の存在を前提として、家計補助的なパート・アルバイトが正当化される。マリア・ミースが言う「主婦化」である。企業利益のために、賃金・労働時間・権利などの面で労働が劣化し、限りなく主婦の無償労働に近づいている。
 「女工哀史」のころから、資本によって女性労働は「家計補助的」として搾取の対象とされてきた。今や、その動きは若年男性にまで及んでいる。それを裁判所がそのまま認めるとは・・・
 これは1755万人の非正規労働者の切り捨てであり、933万人の女性パート労働者への侮辱である。こんな判決に泣き寝入りするわけにはいかない。

しかし、すべての裁判官が、こんなに「非常識」ではないと信じたい。
幸い、私の訴訟の裁判官は、京都新聞COM雇い止め事件で「雇い止めは無効」という画期的な判決を書いている。私の雇い止めについても、公正な判断を期待している。
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2011.04.05 / Top↑

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